コラム

「頼みたくなる工場」に見える会社ページの書き方|設備・加工事例・対応範囲の伝え方

技術はあるのに、会社ページを見た発注者から問い合わせが来ない。多くの場合、原因は腕ではなく書き方にあります。発注者が知りたいのは、自分の案件を任せられるかどうか。対応できる加工、設備、材質と板厚、加工事例、受けられる範囲の書き方を順に整理しました。

板金工場の事務所の打ち合わせテーブル。大きな窓の向こうに、鋼板が整然と積まれた工場の通路が見える

発注者は会社ページで「任せられるか」を判断している

外注先を探している発注担当者は、会社ページを隅から隅まで読むわけではありません。手元の図面を思い浮かべながら、この工場に出せるかどうかを数十秒で判断しています。

そのとき確認しているのは、ほぼ決まった項目です。うちの部品の加工ができるか。材質と板厚は扱えるか。大きさは設備に収まるか。ロットは合うか。似たものを作った実績はあるか。ここに答えが書かれていれば、問い合わせに進みます。書かれていなければ、確認の電話をかける手間を惜しんで、次の候補に移ります。

よくある会社ページは、代表あいさつ、会社の沿革、企業理念が中心で、この問いへの答えが見当たりません。どれも大切な情報ですが、初めて訪れた発注者にとっては後回しの情報です。「頼みたくなる工場」に見える会社ページとは、発注者の確認項目に先回りして答えているページのことです。

対応できる加工は「工程の名前」で並べる

最初に書くべきは、対応できる加工です。ここを「板金加工全般」「精密板金」とひとことで済ませている会社ページは少なくありません。しかし発注者が探しているのは、切断から曲げ、溶接、仕上げまでのどこを頼めるか、という具体的な範囲です。

書き方は、工程の名前をそのまま並べることです。CAD/CAM、レーザー加工、タレパン加工、曲げ、溶接、塗装、組立、表面処理、機械加工。自社で行う工程と、協力工場に出してまとめて納める工程は分けて書きます。「塗装とめっきは協力工場で手配し、一括で納品します」と書かれていれば、発注者は窓口を一本にできると判断できます。

溶接なら、TIG・半自動・スポットのどれに対応しているか。曲げなら、長尺物を曲げられるか。工程の名前に一段だけ具体性を足すと、同じ工程を掲げる他社との違いが伝わります。

設備は台数ではなく「できる大きさと厚さ」で書く

設備の一覧を載せている工場は多いのですが、メーカー名と型式だけが並んだ表になっていることがよくあります。設備に詳しい人なら能力を読み取れますが、発注担当者の多くは型式を見ても、自分の部品が入るかどうかは分かりません。

設備は、能力に言い換えて書きます。レーザー加工機なら、加工できる板の最大サイズと、材質ごとの切断できる板厚。ベンダーなら、曲げられる最大の長さと加圧能力。溶接なら、扱える材質と、大物の架台まで対応できるかどうか。型式の表は残したまま、その横に「最大○mm×○mmまで」「ステンレス○mmまで」と一行添えるだけで、ページの伝わり方が変わります。

扱える材質と板厚は、設備とは別にまとめて書いておくと親切です。鉄、ステンレス、アルミ、亜鉛めっき鋼板など、材質ごとに得意な板厚の範囲を示します。とくにステンレス加工やアルミ加工は、得意な工場とそうでない工場がはっきり分かれるため、発注者が必ず確認する項目です。

板金工場の会社ページに載せたい5つの情報の図解。対応できる加工、設備と最大サイズ、材質と板厚、加工事例、ロットとエリア

加工事例は「何を、どう作ったか」を1件ずつ書く

加工事例は、会社ページの中でいちばん説得力のある情報です。ただし、完成品の写真を並べただけでは、発注者は自分の案件に当てはめられません。

1件ごとに、次の項目を短く添えます。材質と板厚、おおよその大きさ、主な工程、ロット、そして工夫した点です。「SUS304の薄板で、溶接の歪みを抑えるために治具を作り、溶接の順番を変えた」といった一文があると、写真だけでは見えない技術が伝わります。

取引先との守秘義務で製品を出せない場合は、形状を変えたテストピースや、社内で作った試作品を撮影して使います。製品名や取引先名は出さず、「装置カバー」「厨房機器の部品」のように用途の種類だけを書けば、多くの場合は問題なく掲載できます。掲載の範囲に迷うときは、取引先に確認してから出してください。

事例の数は、最初から多くなくて構いません。得意な仕事を代表する3件をきちんと書き、そこから少しずつ増やしていくほうが、写真だけの事例を並べるより効果があります。

受けられる範囲は、先に書いておくほど問い合わせの質が上がる

ロット、納期、エリアといった「受けられる範囲」は、書くと問い合わせが減るのではないかと心配される項目です。実際には逆で、先に書いておくほど、合わない問い合わせが減り、合う問い合わせが増えます。

ロットは、1個からの試作に対応するのか、量産が中心なのかを書きます。試作対応、量産対応、小ロット対応、短納期対応のどれが得意なのかがはっきりしていると、発注者は案件ごとに声をかける先を選べます。図面が固まる前の段階から相談に乗れるなら「設計から相談可」、見積を当日中に返せるなら「即日見積もり」と、発注者が使う言葉で書いておきます。

エリアは、納品や打ち合わせで動ける範囲を書きます。遠方でも図面のやり取りと配送で対応できるなら、そのこともはっきり書いてください。発注者が「この距離では頼めない」と自分で判断してしまうのを防げます。ISO9001やISO14001を取得しているなら、それも受けられる範囲の一部として載せておきます。

書いたあとに見直す3つのポイント

会社ページを書き終えたら、発注者の立場で3つの点を確認します。

ひとつめは、ページを開いて最初の画面で、何の工場かが分かるかどうかです。会社名とあいさつ文だけでなく、「ステンレスの薄板加工と溶接が得意な板金工場」のように、ひとことで得意分野が伝わる一文を上のほうに置きます。

ふたつめは、写真に仕事の様子が写っているかどうかです。社屋の外観だけでなく、作業場の全体や、整理された材料置き場の写真があると、工場の管理の状態が伝わります。

みっつめは、情報が古くなっていないかどうかです。設備を入れ替えたのに一覧が昔のまま、というのはよくあることです。設備を更新したとき、新しい種類の仕事を受けたときに、会社ページも一緒に直す習慣をつけてください。

会社ページは、営業担当者の代わりに、24時間発注者の質問に答えてくれる資料です。まずは自社のページを開き、対応できる加工と設備の書き方から見直してみてください。


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