板金部品の材質は、SPCC・SECC・ステンレス・アルミの4つから選ぶことがほとんどです。選び方の軸は「どこで使うか」と「表面処理をどうするか」の2つ。材料の単価だけで決めると、塗装やめっきを足した総額で逆転することがあります。4材質の違いとコストの考え方を整理しました。

材質は「使う場所」と「表面処理」で決まる
材質を決めるとき、最初に考えるのは部品が置かれる環境です。空調の効いた屋内なのか、湿気や水がかかる場所なのか、屋外で雨風にさらされるのか。次に、見た目の要求です。塗装して色をつけるのか、素材の地肌を見せるのか、見えない場所なので錆びなければよいのか。
この2つが決まると、候補はほぼ絞れます。逆に、ここがあいまいなまま「とりあえずステンレスで」と依頼すると、必要以上に高い部品になったり、反対に安い材質を選んで現場で錆が出たりします。以下、よく使われる4つの材質を順に見ていきます。
SPCC|安くて加工しやすい。ただし錆対策が前提
SPCCは冷間圧延鋼板で、板金でもっとも一般的な材料です。材料が手に入りやすく、切断・曲げ・溶接のどれも素直にできるため、4つの中では材料費も加工費も抑えやすい材質です。
弱点は錆びやすいことです。地肌のまま使うことはまずなく、塗装やめっきをかける前提で選びます。つまりSPCCを選ぶなら、表面処理の費用と日数を最初から見積に入れておく必要があります。焼付塗装や粉体塗装で色を指定したい部品、溶接でしっかり組みたいフレームや架台などに向いています。
SECC|めっき済みで、屋内の筐体に向く
SECCは、鋼板にあらかじめ電気亜鉛めっきをかけた材料です。板の段階でめっきがついているので、屋内で使う分には追加の表面処理なしでも錆びにくく、制御盤や電気機器のカバー、屋内の筐体によく使われます。
注意したいのは、切断した端面や、溶接で熱が入った部分にはめっきが残らないことです。溶接が多い形状では、めっきが焼けた部分の処理が別に必要になり、SECCの良さが薄れます。溶接を減らせる形状か、ねじやリベットで組む構造のほうが相性のよい材質です。屋外で使う場合は、めっきの厚い溶融亜鉛めっき鋼板や、塗装との組み合わせを工場と相談してください。

ステンレス|錆びにくく、仕上げ次第でそのまま使える
ステンレスは錆びにくく、塗装なしで地肌のまま使えるのが最大の利点です。水回りや食品を扱う設備、屋外の部品、清潔感が求められる外装などで選ばれます。板金でよく使われるのはSUS304で、磁石がつくSUS430も用途によって使われます。
一方で、材料費は鋼板より高く、硬くて粘りがあるため、曲げや切断に手間がかかります。曲げたあとの戻り(スプリングバック)も大きく、精度を出すには工場の経験が要ります。溶接すると周りに焼け色がつくので、見える部分なら焼け取りや研磨の工程が加わります。
地肌を見せる部品では、表面の仕上げ(ヘアラインなど)や、傷をつけないための保護フィルムの扱いも指定しておくと、仕上がりの食い違いを防げます。
アルミ|軽さが要るときの選択肢
アルミは重さが鉄のおよそ3分の1で、軽くしたい部品で選ばれます。持ち運ぶ装置のカバー、人が開け閉めする扉、搬送装置の部品などです。板金ではA5052がよく使われ、曲げやすく錆びにくい材料です。
柔らかいので傷がつきやすく、運搬や加工中の扱いに気を配る必要があります。溶接は鉄やステンレスより難しく、対応できる工場が限られます。表面処理はアルマイトが一般的ですが、溶接した部分は色むらが出やすい点も覚えておくとよいでしょう。材料費は鋼板より高めです。
コストは「材料+加工+表面処理」の合計で比べる
材質のコストを比べるときは、材料の単価だけでなく、部品になるまでの総額で見ます。たとえばSPCCは材料が安くても、塗装を足すと、塗装なしで済むSECCと総額が近づくことがあります。ステンレスは材料と加工が高くても、塗装が要らない分と、錆による交換の手間が減る分で、長い目では割に合う場合があります。
もう一つ効いてくるのが板厚です。一般に流通している板厚から選ぶと材料が手に入りやすく、納期も読みやすくなります。特殊な板厚や、少量しか使わない材質は、材料の取り寄せに日数がかかることがあります。数量が少ない部品ほど、工場が普段使っている材質・板厚に寄せると、コストと納期の両方で有利です。
迷ったら「使用環境」と「求める見た目」を伝えて相談する
材質が決めきれないときは、無理に決めずに工場に相談するのが近道です。そのとき、材質の候補ではなく、判断の材料を伝えます。どこで使うのか(屋内・屋外・水回り)、見える部品かどうか、重さの制約はあるか、溶接で組むのかねじで組むのか。これだけで、工場は経験から現実的な材質と表面処理の組み合わせを提案できます。
依頼先を探す段階で材質が決まっているなら、その材質を扱える工場から探すと話が早く進みます。マッチ工場ナビ ビジネス版では、エリアや加工方法に加えて、「ステンレス加工」「アルミ加工」などのこだわり条件で全国の板金工場を絞り込めます。溶接が多い部品なら加工方法の「溶接」、色をつけたいなら「塗装」も合わせて選んでみてください。
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