未経験者を採用しても、3か月以内に辞めてしまう。その多くは本人の根性ではなく、入社後に何を覚えればよいのかが見えないことが原因です。板金工場で未経験者を育てるための最初の3か月の教育計画を、月ごとの目標と教える順番に分けて整理しました。

未経験者がつまずくのは「最初の3か月」
未経験で入った人が辞めるかどうかは、最初の3か月でほぼ決まります。この時期の本人は、仕事ができないことよりも、自分が何をできるようになればよいのか分からないことに不安を感じています。
よくあるのが、配属初日に「まずは見て覚えて」と言われ、忙しい現場の端で立ち続ける状態です。教える側に悪気はありませんが、本人から見れば、誰に何を聞けばよいのかも分からない時間が続きます。1週間たっても手を動かせないと、「自分はここに向いていない」と考え始めます。
逆に、月ごとの目標と教える順番が決まっていれば、覚えるのに時間がかかっても、本人は前に進んでいることを実感できます。教える側も、今どこまでできているかを同じ物差しで見られるようになります。
受け入れる前に決めておく3つのこと
教育計画といっても、分厚いマニュアルは要りません。入社日までに、次の3つを決めておけば十分です。
1つ目は、指導担当を1人決めることです。複数の人がばらばらに教えると、言うことが食い違い、本人は誰の指示に従えばよいか迷います。質問はまずこの人に、と決めておくだけで、本人も周りも動きやすくなります。指導担当は技術がいちばん高い人である必要はなく、手を止めて説明できる人を選びます。
2つ目は、最初に任せる工程を決めることです。板金工場には切断、曲げ、溶接、仕上げ、組立、検査と多くの工程がありますが、最初から全部を覚えることはできません。危険が少なく、結果が目で確かめやすい工程から始めるのが基本です。多くの工場では、バリ取りや仕上げ、組立、検査の補助がその入口になります。
3つ目は、3か月後のゴールを決めることです。「この工程を、指導担当の確認つきで一人で回せる」のように、できることで書きます。「一人前になる」のようなあいまいなゴールでは、本人も教える側も進み具合を測れません。
1か月目|安全と工場の全体を知る
最初の1か月の目標は、けがをせずに工場の中で動けるようになることと、自分の仕事が全体のどこにあたるのかを知ることです。
まず、入社時の安全衛生教育を行います。雇入れ時の安全衛生教育は、労働安全衛生法で事業者に義務づけられています。保護具の正しい着け方、機械に近づいてよい範囲、非常停止の位置、材料の持ち方と運び方、切りくずや鋼板の端でのけがの防ぎ方。板金工場で起きやすいけがを、実際の現場を歩きながら説明します。
次に、工場の全体を一通り見せます。材料が入ってきてから、切断、曲げ、溶接、仕上げ、検査、出荷までを、実物の部品を追いかけながら見てもらいます。全体の流れを知っていると、自分の工程で起きたことが次の工程にどう影響するのかを理解しやすくなります。
1か月目の後半では、図面の見方の基本と、スケールやノギスを使った寸法の測り方を教えます。この2つはどの工程に進んでも使う技術です。あわせて、毎日の片付けと道具の置き場所をそろえる習慣もこの時期につけてもらいます。

2か月目|1つの工程を担当として任せる
2か月目は、最初に決めた工程を「担当」として任せます。補助として横で見ているのと、自分の名前で仕事を受け持つのとでは、覚える速さがまったく違います。
任せ方は、指導担当がやって見せる、本人がやってみる、指導担当が確認する、という順番を繰り返します。最初は1つの部品、慣れたら1つのロット、と範囲を少しずつ広げます。できた部品は指導担当が必ず確認し、良い点と直す点をその場で伝えます。確認を後回しにすると、同じ間違いが続いてしまいます。
この時期に大事なのが、週に一度の短い振り返りです。10分ほどで構いません。今週できるようになったこと、まだ不安なこと、次の週にやることを話します。本人の口から不安を聞ける場があると、辞める前の小さなサインに気づけます。
曲げや溶接の工程に進む場合は、作業に必要な教育を先に受けてもらいます。たとえばアーク溶接の作業につく前には、「アーク溶接等の業務に係る特別教育」を受けることが法令で定められています。ほかにも、扱う機械や荷の重さによって、特別教育や技能講習が必要な作業があります。どの作業に何が必要かは、配属前に確認しておいてください。
3か月目|一人で回せるかを確かめ、次の半年を決める
3か月目は、担当の工程を、指導担当の確認つきで一人で回せるかを確かめる時期です。段取りから加工、自分での寸法確認、次の工程への受け渡しまでを通して任せてみます。
月末には、指導担当と上長を交えて面談をします。入社時に決めた3か月後のゴールに対して、できるようになったこと、まだ足りないことを具体的に伝えます。できるようになったことは、はっきり言葉にして認めてください。未経験者にとって、自分の成長を人から言ってもらえる機会は、何よりの励みになります。
そのうえで、次の半年の目標を一緒に決めます。今の工程を深めるのか、隣の工程に広げるのか。資格取得支援を行っているなら、ここで取る資格も決めます。玉掛け技能講習、フォークリフト運転技能講習、ガス溶接技能講習など、担当する仕事に合わせて順番を考えます。先の道筋が見えると、本人は「この会社で続けていけそうだ」と思えるようになります。
教育計画は求人票にも書く
ここまでの教育計画は、社内のためだけのものではありません。求人票に書けば、そのまま未経験の応募者への説明になります。
未経験の人が求人を見ていちばん知りたいのは、入ってから何をどの順番で覚えるのか、誰が教えてくれるのかです。「入社後1か月は安全教育と工場全体の見学、2か月目から仕上げの工程を担当していただきます。指導担当がつき、毎週振り返りの時間をとります」と書かれている求人は、「未経験歓迎」の一言だけの求人よりもずっと応募しやすくなります。
マッチ工場ナビ リクルート版であれば、こだわり条件の「未経験OK」「資格取得支援」で求人が絞り込まれます。教育の仕組みが実際にあるなら、これらの条件を入れたうえで、仕事内容の欄に3か月の流れを書き添えてください。条件と中身がそろっている求人は、読んだ人に信頼されます。
教育計画は、一度作れば次の採用でも使えます。まずは、今いる社員が入社したとき最初に何を覚えたかを思い出しながら、1か月目・2か月目・3か月目の目標を1行ずつ書き出すところから始めてみてください。
人材を募集している板金工場の皆さまへ
マッチ工場ナビ リクルート版に、入社後の育て方まで伝わる求人を掲載して、板金の仕事に興味がある方に見つけてもらいませんか。求人の掲載申請は無料です。
無料で求人掲載を申請する
板金工場の求人を探している方へ
マッチ工場ナビ リクルート版では、全国の板金工場の求人をエリアや「未経験OK」「資格取得支援」などの条件から探せます。会員登録は不要です。
求人を探す